スマートフォンを落として、本体に凹みができたり、液晶画面が割れてしまった経験をお持ちの方もいるかもしれません。電車の中では、よく液晶画面が割れているスマートフォンを使い続けている方を見かけます。
今回は、1mの高さからコンクリート上にスマートフォンを落としたと仮定して、コンクリートにぶつかった際の衝撃をCAEで解析します。
スマートフォンの本体部分はアルミニウム、液晶部分はガラスに設定して、4.43m/sの速度でコンクリートに落下した際の、スマートフォンに生じるミーゼス応力をCAEによって調べてみます。
落下時の応力を解析
本体の材料設定
スマートフォンは、45度傾けた状態でコンクリートの上に1mの高さから落とします。
メッシュ密度を細かくすればするほど計算精度は向上しますが、その代わり計算時間が膨大になります。
ここでは、コンクリートとスマートフォンが接触する箇所のメッシュを細かくする代わりに、影響の出ない箇所はメッシュを粗くしています。また、液晶画面と本体が接触する箇所も細かいメッシュを配置しています。
メッシュ密度を調整
接触箇所は細かいメッシュを配置
スマートフォン全体に細かいメッシュを配置した予備解析では、16コアを使っても1時間で計算が終了しなかったため、上記のようにメッシュ密度の分布を調整しています。
1mの高さから自由落下すると、衝突時の速度は4.43m/sになります。コンクリートぶつかると速度がゼロになり、スマートフォンに急激な荷重が加わります。その結果、慣性の法則に従ってスマートフォン内部には波の性質を持つ応力波が発生します。
応力波は端面にぶつかると反射し、応力波の到達した箇所は引っ張られて変位します。そのため、時間の経過とともに応力の集中する箇所が複雑に変化しています。
CAEでは解析結果を可視化して確認することができます。本体をアルミ製と仮定しているので、アルミの降伏する70MPaで赤色に表示するように設定しました。赤色の箇所は凹む可能性があることを示しています。
スマートフォン落下直後
0.00004秒後
0.00008秒後
0.00012秒後
0.00016秒後
0.00020秒後
液晶画面のミーゼス応力の分布は下図のようになります。ミーゼス応力は0.0012秒後、0.0030秒後、0.00048秒後に高くなっています。解析のステップを細かくすれば、グラフはもっと滑らかな曲線になりますが、計算時間が長くなります。今回は10分程度で解析を終了させるため、0.00004秒間隔で0.00048秒まで解析しています。
応力波が発生するため、液晶画面には大きな応力が何度もかかっています。
スマートフォン本体のアルミフレームにかかるミーゼス応力は、金属が降伏する70MPaを超えています。つまり、1mという低い高さでもコンクリートのような固い床に落とすと、本体が凹んでしまう可能性があります。
また、落とした衝撃は1度だけではなく、何度もアルミフレームと液晶部分を往復します。大きな応力が繰り返しかかるので、液晶画面の割れる可能性が高くなっています。
逆に、フローリングや絨毯の上に落とした場合は、速度がゼロになるまでの時間が長くなるため、スマートフォンにかかる荷重を減らすことができます。例えば、静止するまでの時間を0.01秒から0.1秒にできれば、衝撃の荷重(加速度)を1/10にすることができます。
静止するまでの時間が長くなるほど衝撃の荷重は小さくなります。そのため、革のケースや柔らかい素材のケースを付けることをおすすめします。
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