台湾の超高層ビル「台北101」の高さは509.2mで、台風対策として87階から92階までの吹き抜けに660トンの巨大振り子が設置されています。この巨大振り子は誰でも見学できるルート上にあるので、台北観光の際に見たことがある人も多いのではないでしょうか。
日本では地震対策に、振り子を高層ビルに設置することで、長周期地震動を抑制する取り組みが行われています。高層ビルは1秒間に1回(1Hz)未満のゆっくりとした揺れで大きく共振するため、振り子による地震の揺れを軽減する免震システム導入などの対策が進んでいます。
今回の振動解析では、ビルの揺れに対して振り子が本当に効果を発揮するのか確認します。ビルの高さは92mとして、振り子の有無によって揺れが変わるかどうか解析します。
振り子をビル内に配置
振り子なし
振動解析を始める前に、3Dモデルからメッシュを作成します。粗いメッシュにすると振り子が球体にならないため、振り子部分には特に細かいメッシュを配置することで、解析精度の向上を図ります。
メッシュを徐々に細かくすることで解析精度は上がりますが、計算時間とコストも増えてしまいます。そのため、最初は粗いメッシュから始めて、徐々にメッシュを細かくします。
メッシュ外形
振り子拡大
振動解析の結果を下に表示しているので結果は一目瞭然ですが、建物の振動が振り子により抑制されることが確認できます。左図は振り子がある場合の建物、右図は振り子がない場合の建物の揺れを可視化しています。各モードにおける建物の揺れは、その大きさによって色分けして表示しています。
揺れの大きさは、揺れが小さい場合は濃い青色で、揺れが大きくなるほど緑色→黄色→赤色と変化します。なお、建物の揺れの大きさは強調して表示しています。
モード1:振り子あり
モード1:振り子なし
モード1では、振り子があると建物の揺れをほぼ抑えることができる結果になりました。一方、建物が薄青色で表示されているため、振り子がある建物に比べると振り子がない建物は、揺れが大きいことを示しています。
振動解析ではモード1からモード10までの揺れを計算しました。下記にそれぞれのモードにおける建物の揺れを可視化して表示しています。
こちらも結果を見れば一目瞭然ですが、振り子によって建物の揺れが大きく抑えられることが確認できます。振り子自身は揺れますが、振り子によって建物の揺れは抑えられ、振り子がない建物と比べると濃い青色箇所が多く存在しています。
モード2:振り子あり
モード2:振り子なし
モード3:振り子あり
モード3:振り子なし
モード4:振り子あり
モード4:振り子なし
モード5:振り子あり
モード5:振り子なし
モード6:振り子あり
モード6:振り子なし
モード7:振り子あり
モード7:振り子なし
モード8:振り子あり
モード8:振り子なし
モード9:振り子あり
モード9:振り子なし
モード10:振り子あり
モード10:振り子なし
振動解析の結果から、振り子はビルの振動対策に大きな効果を発揮すると考えられます。高層ビルでは、台風などの風圧、地震による長周期地震動などにより揺れの影響を受けやすい構造のため、繰返し揺れると変形・破損の恐れがあります。
高層ビル特有の揺れを解消するためには、電源がなくても自動で動き、コンピューター制御も必要ない振り子が有効であると考えられます。
振り子の制振効果を高めるためには、振り子の重量を増やす、または振れ幅を大きくする必要があります。しかし、振り子が大きくなり、振れ幅が大きくなると、ビル内に巨大な吹き抜け空間を確保するという困難な問題にぶつかります。
既存のビルの場合は、屋上に振り子を設置することで制振効果が得られますが、大きな振り子を屋上に設置することは難しいので、複数台の小さな振り子を設置する方法が開発されています。
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