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繊維強化プラスチックで補強する


          

鋼材には降伏点(耐力)が存在するため、ある一定の応力を超えると曲がったまま元の形状に戻らなくなってしまいます。例えば、よく使われているSS400(一般構造用圧延鋼材)では、肉厚が16mm以下の場合の降伏点は245MPa以上とされています。つまり、245MPa以上の応力がかかると、SS400は荷重と伸びが比例せずに塑性変形するようになります。

繊維強化プラスチックと鋼材を組み合わせた場合、鋼材は降伏せずに弾性変形を続けるようになります。そのため、単体ではなく組み合わせて使うことに大きなメリットがありますが、ここでは、既にある構造物に繊維強化プラスチックを貼り付けた場合に、全体にかかる応力をどの程度減らすことができるのか、CAEにを使って検証してみます。

関連記事:複合材をCAEで設計する


CAEで解析するH形鋼の寸法と荷重条件

CAEで解析するH型鋼の寸法と荷重条件

H形鋼の末端(左)を固定(拘束)、反対の端面(右)に1000Nの荷重をかけます。

          

H形鋼にFRPを積層して効果を調べる


繊維強化プラスチックの繊維にはガラス、カーボン、ケブラーなどの様々な種類の繊維が存在しています。このうち、ガラス繊維はホームセンターなどでも販売されているため入手が容易で、施工できる会社も多いことからFRP(ガラス繊維強化プラスチック)をH形鋼に5mm積層したモデルと、通常のH形鋼で応力と変位を比較してみます。

FRPのヤング率は40GPaに設定しています。

H形鋼

FEMで解析するH形鋼

H形鋼+FRPを5mm積層

H形鋼にFRPを5mm貼り付ける
     

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FRP積層は補強効果あり!


CAEによる計算結果では、H形鋼にFRPを積層すると、大きく構造物にかかる応力を削減できることがわかります。フォン・ミーゼス応力の大きい箇所を赤色で表示していますが、H鋼にFRPを積層したモデルでは、赤色表示がなくなっています。

同様に変位についても、H鋼にFRPを積層すると変位が大きいことを示す赤色の表示がなくなっています。

H形鋼 H形鋼+FRP
ミーゼス応力(MPa) 21.7 11.8
変位(mm) 0.038 0.024

CAEによる計算結果を見ると、FRPを5mmも貼り付ける必要はなさそうです。降伏点を超えた後も鋼材は弾性変形するため、2層でも十分に補強効果が得られます。

H形鋼のミーゼス応力

H形鋼のミーゼス応力

H形鋼+FRPのミーゼス応力

H形鋼+FRPのミーゼス応力

H形鋼の変位

H形鋼の変位

H形鋼+FRPの変位

H形鋼+FRPの変位
 

円筒容器にFRPを積層する


H鋼の次に、内圧がかかる円筒容器の応力をFRPを積層することで減らすことができるかどうか確認します。外径114.3mm、内径105.3mmの円筒容器にFRPを5mm積層したモデルと、通常の円筒容器で応力を比較してみます。

FRPのヤング率は40GPaに設定しています。

円筒容器

円筒容器

円筒容器+FRPを5mm積層

円筒容器にFRPを5mm積層

円筒容器のミーゼス応力

円筒容器のミーゼス応力

円筒容器+FRPのミーゼス応力

円筒容器+FRPのミーゼス応力

円筒容器は両端を固定しているため、両端付近に特異点が生じています。そのため、中心(上図の赤矢印箇所)のミーゼス応力を比較しています。

円筒容器 円筒容器+FRP
ミーゼス応力(MPa) 11.8 10.7

ミーゼス応力の比較では、円筒容器にFRPを5mm巻きつけると、何もしていない円筒容器と比べて応力を約10%低くできることがわかります。


繊維強化プラスチックの適用事例


超音速旅客機のコンコルドは、2000年の墜落事故で運行停止になりました。離陸滑走中に金属片を踏んだことによりタイヤが破裂し、破片が燃料タンクを破損、燃料に引火したことが墜落の原因とされています。

コンドルドの機体下部

事故後は、防弾チョッキにも使われているケブラー繊維を用いて、燃料タンクの内側にゲブラー繊維強化プラスチックを貼り付ける補強が行われました。

繊維強化プラスチックによる補強を行うことで、衝撃によって生じる応力の低減効果が得られます。さらに、繊維強化プラスチックが割れた場合でも、ケブラー繊維が入っていることから割れるだけで大きく欠損せず、流出する燃料を最小限に押さえることができます。

様々な対策によって安全性が確保されたことから、英仏の航空当局から運行再開が認められましたが、残念ながら2001年にアメリカ同時多発テロが起きたため、運航コストの高いコンコルドは運行停止になりました。

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