自宅でたこ焼きをつくると上手に焼けなかった経験はありませんか。店舗では熱伝導率の高い「銅板のたこ焼き器」が多く使われている一方、家庭用には「鉄板のたこ焼き器」が多く販売されています。
なぜ家庭用のたこ焼き器では、焼くのが難しく感じるのか、CAEによる熱解析を用いてたこ焼き器の表面温度の変化をシュミレーションすることで検証します。たこ焼き器の材質を選定する際の参考にしてみてください。
材質は「鉄」「銅」そして「金」の3種類として、ガスコンロでそれぞれのたこ焼き器を加熱した場合の温度変化の様子を検証します。
金属では「銀」が最も熱伝導率が高くなります。しかし、使用するとすぐに黒く酸化、磨く作業が大変なため、たこ焼き器の材質としては実用的ではないと判断して、熱解析の候補から外しました。
CAEによるたこ焼き器の熱解析手順
熱負荷は、ガスコンロの炎がたこ焼き器に当たる箇所(下図の青色)に設定します。3分(180秒)で20℃から220℃まで昇温し、その後は250℃に固定しました。
材料の熱伝導率は下記の値に設定しました。
物質名 | 熱伝導率(W/mK) |
---|---|
鉄 | 86.4 |
銅 | 401 |
金 | 318 |
解析のために、たこ焼き器を小さなメッシュ(要素)に分割します。要素数は約69,000、1次要素でメッシュを作成しました。
ガスコンロの炎によって昇温する箇所(青色)とそれ以外の2箇所、全部で3つのパーツから構成されています。
温度分布を色分けして表示しています。室温は20℃(293.15K)に設定し、ガスコンロで3分間かけて250℃(543.15K)まで加熱します。温度は低音の青色から、昇温するにつれて赤色に変化して表示されます。
30秒後
60秒後
90秒後
120秒後
150秒後
180秒後
加熱される部分から徐々に熱が伝わっていく様子が確認できます。鉄製のたこ焼き器は、120秒後もまだ四隅の温度が低くなっています。そのため、同じタイミングで焼き始めると四隅のたこ焼きは熱が通りにくく、よく焼けているものと四隅を入れ替える必要があります。
銅製のたこ焼き器では熱伝導率が鉄より高いため、ガスコンロに点火してからわずか90秒後には全体が250℃に達しています。
鉄製と比べると半分の時間で250℃まで温度が上がるため、素早く生地を返す必要があります。そのため上手に焼けるようになるには何度か練習する必要があるかもしれません。
銅製のたこ焼き器
30秒後
60秒後
90秒後
銅製のたこ焼き器の四隅まで均一に加熱されるため、焼きムラは出にくいでしょう。
素早く焼く練習は必要ですが、どの素材のたこ焼き器を買えばいいのか迷ったときは「銅板のたこ焼き器」がおすすめです。
銅には及びませんが、金も熱伝導率の高い金属です。黄金のたこ焼き器の熱伝導をシュミレーションすると下図のようになります。
金は錆びないため、たわしで洗ったり、落としたりしなければ形状が変わらず、何千年も使用することができます。黄金のたこ焼き器を作れば、やがては国宝にも指定されるかもしれませんね。
黄金のたこ焼き器
周囲と同じ緑色箇所が多い
60秒後
90秒後
120秒後
銅よりはゆっくり昇温するため、急いで生地を返す必要はありません。そのため、初心者には「黄金のたこ焼き器」が適しているといえます。
ここまで3種類の金属で温度変化の様子を紹介してきましたが、熱伝導率がわかれば「熱解析」によって熱の伝わり方をシュミレーションすることができるようになります。
この解析はコンピューターによる並列計算を利用していますが、計算に使うコンピューターを4コアに設定して計算を始めると3~4分で解析は終了しました。
たこ焼き器の実寸測定から3Dモデル作成、および解析条件設定、解析結果の表示までのトータルで3時間程度かかっています。
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