構造解析に初めて挑戦する場合、最初に片持ち梁を使って理論値と解析結果がほぼ一致することを確かめたことのある方も多いのではないでしょうか?
新入社員教育を毎年担当していますが、断面2次モーメントとたわみの計算に挑戦すると、大多数の人が単位の換算で間違えてしまい正しい答えにたどり着けません。また、イギリスやアメリカではSI単位以外の単位(ヤードやポンド)も使われているため、特に海外のお客様とのやりとりでは、単位の換算ミスが致命的なエラーに結びつくことがあります。
人間による手計算では、思い込みやミスを完全にゼロにすることはできないため、数学ソフトで二重確認することをおすすめします。このページでは、無料で利用できるPTC社の「Mathcad Express」を使って、手計算の結果を確認する方法について解説しています。
エクセルを使って計算することもできますが、「Mathcad Express」は単位を自動的に変換するためエラー回避に大きな効果を発揮します。どの単位で計算しても希望するSI単位で表示できるため、時間をかけて単位をチェックする手間が省けます。
Mathcadで単位を自動変換
「Marhcad Express」での数式の入力ですが、ワードの入力とほぼ同じような手順で入力できます。例えば、1N(ニュートン)と入力したい場合は、数字の「1」を押し、次に「N」と入力します。大文字を入力する場合は、シフトを押しながらアルファベットを入力します。
mm2のような累乗を入力する場合は、「m」を2回押し、数字の0の2つ右にある「^」を押すと、次に入力する数字が累乗になります。
では、練習で「1kgf/mm2」と入力してみましょう。下左図の通り入力した後に、「スペース」キーを1回押して「kgf」の背景が灰色に反転したことを確認します。
「スペース」を1回押す
「kgf」が反転
次に「/」を押して「mm」と入力します。乗数を入力するので「^」を押した後に数字の「2」を押すと「mm2」となります。
「^」を押す
「2」を入力して2乗にする
「スペース」キーを数回押して、下図左の通り背景が反転したら「=(イコール)」と入力します。単位はPa(パスカル)で表示されるので、MPa(メガパスカル)に変更します。Paの前にカーソルを合わせ、「M」と入力するとMPaに単位が変わります。
「/」を押して「mm」と入力
単位をMPaに変更
「Mathcad Express」を使えば単位換算が原因のエラーをゼロにすることが可能です。しかし、計算ソフトを頼りにしていては、数字入力間違いなどによるエラー発生時に気づくことができなくなるので、一度は手計算で解くようにしましょう。関数電卓を用意すれば、構造解析で必要な計算はほぼ解くことができます。
ここでは、片持ち梁のたわみ量を公式を使って計算して、数学ソフトで間違っていないことを確認します。下図の片持ち梁のたわみ量をまずは計算します。
片持ち梁のたわみ量計算
Mathcad Expressでは、最初に計算式に代入する値を定義する必要があります、下図の左側が定義式で、入力する時は「:(コロン)」を使います。例えば、「B」の入力後に「:(コロン)」を押すと、Bという文字がコロンの後に続く「50mm」であると定義されます。
定義式の右側は「テキストボックス」を使って入力しています。定義式が何を定義しているのか明示しておくことで、次回以降の計算にも今回作成したMathcadシートが流用できるようになります。
定義式を入力
テキストボックスで表示
次に、断面2次モーメントを計算します。断面2次モーメントの計算では、梁の縦方向と横方向の違いに意味があるので、3乗する方向を間違えないように注意する必要があります。
定義式を下図左側に記載しています。計算結果を確認する場合は、「:(コロン)」ではなく「=(イコール)」と入力します。下図の右側に計算結果が表示されています。
計算式の入力では、「B・H3」まで入力した後は、「スペース」キーを数回押して分子になる「B・H3」の背景を反転させてから、「/」キーを押して12と入力します。背景が反転した部分が分子になるので、「B・H3」の全てを反転させる必要があります。
断面2次モーメントの計算が終わったので、最後にたわみ量を求めます。下図の計算式を入力してみましょう。下図の左側が定義式、右側に計算結果を表示しています。
計算結果はm(メートル)で表示されているので、mm(ミリメートル)表示に変更します。メートルの前でクリックして、「m」を入力すると「mm(ミリメートル)」表示になります。
計算結果はm(メートル)表示
mm表示に変更する
片持ち梁のたわみ量は、1.22mmとなります。理論値が得られたので、構造解析によるシミュレーション結果と比較してみます。
構造解析に使う3Dモデルのメッシュは自動で作成しますが、計算時間を短縮するため1番粗いメッシュサイズに設定しています。要素は2次要素に設定してメッシュを作成し、片持ち梁の先端に200Nの荷重を掛けてシミュレーションを行います。
構造解析の結果を下記に記載していますが、たわみ量が理論値1.22mmに対して、シミュレーション結果は1.26mmなので、かなり理論値に近い結果が得られています。
たわみ量の大きい箇所は赤色で表示されますが、片持ち梁の先端に荷重を掛けているので、当然先端のたわみ量が大きくなっています。
片持ち梁のたわみ量
理論値が得られていない場合は、シミレーションを複数回行って結果が正確かどうか判定する必要があります。今回は理論値が先に得られていたので、1番粗いメッシュサイズでも、2次要素であればかなり正確に片持ち梁のたわみ量の計算ができるとわかりました。
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