Home > CAEについてもっと知る > 構造解析に必要な材料力学の理論-許容応力と降伏点
CAE(Computer aided engineering)というと、その名の通りコンピューターに任せてしまえば解析ができるというイメージがあります。でもいざ解析してみると、どの応力を見ればいいのかわからない、解析結果の判断で困ったという経験をお持ちの方もいるかもしれません。
そんなとき「CAEの専門技術者ではない自分では解析結果を判断できないかも」と考えてしまうかもしれません。でも安心してください。材料力学の知識があれば、構造解析はだれでも行えるようになります。
今回は構造解析を理解するために「応力-ひずみ曲線」と「許容応力と降伏点」、「弾性変形と塑性変形」に絞って材料力学のポイントをお伝えします。
鋼材の応力-ひずみ線図では、降伏点を境にして、左側と右側ではグラフの傾きが異なります。降伏点の左側(青色線)を「弾性域」、右側(オレンジ色線)を「塑性域」と呼んでいます。
弾性域
塑性域
材料によっては、引張試験を行っても降伏点が明確にならない場合があるため、そのような材料では伸びが0.2%に達した点(0.2%耐力)を降伏点の代わりに用います。
降伏点(0.2%耐力)を超えると材料は伸びたままで元の形状に戻らなくなります。機械設計では、降伏点に至る前のさらに小さな応力を許容応力に設定し、対象構造にかかる応力が、許容応力を上回っていないことを確認して安全かどうかを判断します。
構造解析の結果を評価するためには、モデルに負荷が加わったときの応力と変形に着目する必要があります。
例えば、一般構造用圧延鋼材のSS400では、許容応力が100N/mm2(JIS B 8285)、降伏点が245N/mm2、引張り強さ400N/mm2となっています。1N/mm2=1MPaとなります。
SS400の降伏点が245N/mm2なので、245N/mm2までは応力がかかっても弾性変形します。しかし、ギリギリの設計では余裕がなくなるため、許容応力の100N/mm2を超えないように設計します。
材料が降伏するかどうかは、フォン・ミーゼス応力(Fon Mises Stress)で判断できます。フォン・ミーゼス応力は方向を持たず、応力の大きさを表しています。
荷重:30kgf
荷重:60kgf
60kgfまでの荷重では、カラーリングの表示を見るとSS400の許容応力として設定されている100N/mm2に達していないことがわかります。弾性域内なので、ハンガーに掛ける衣類がなくなれば(荷重ゼロ)、重みで曲がったハンガーは元の形状に戻ります。
荷重:90kgf
荷重:120kgf
90kgfの荷重では問題ありませんが、120kgfではミーゼス応力のカラーリングが降伏点を超えているかもしれないことを示しています。降伏点を超えると、塑性域になるので荷重をゼロにしてもハンガーは曲がったままで元に戻らなくなります。
荷重:150kgf
荷重:180kgf
荷重が150kgfを超えると、オレンジ色が混ざります。180kgfの荷重では、400N/mm2(引張り強さ)を超える応力がかかっているため、ハンガーは破断します。
上記の結果から、このハンガーは60kg程度の荷重であれば、安全に使用できることがわかります。荷重が120kgfを超えるとハンガーは曲がったまま元に戻らなくなり、150kgfの荷重がかかると引きちぎれる可能性があります。
ハンガーであれば、重いコートでもせいぜい3kg程度しかありません。そのため、上記の鋼材で作ったハンガーは品質が過剰ということになります。
例えば材料を鋼材から、ポリプロピレン(許容応力:30N/mm2)に変えると、製作コストを下げることができます。また、プラスチックは錆びることがないので、ハンガーの材質としては鋼材より理想的な材質です。
構造解析の結果を正しく解釈するためのポイント
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