Home > CAEについてもっと知る > ミーゼス応力と主応力を理解する
CAEによる解析では「ミーゼス応力」や「主応力」を可視化して表示することができます。どの解析ソフトでも、ミーゼス応力と主応力を表示することができますが、これらの応力の違いを理解して使いこなしていますか?
このページでは、なるべく数学を使わずに応力について説明しています。本格的に理解する場合は、高校で学ぶ行列についての知識が必要になります。しかし、行列について忘れていても応力は理解できるので、なんとなく使っている場合は、このページの内容を参考にして応力を理解して使えるようになりましょう。
垂直応力(x,y,z)とせん断応力(xy,yz,zx)の計6つの成分を組み合わせで、どのような方向の応力でも表現することができます。垂直応力は、面に対して垂直に掛かる力で、x,y,zの3つの成分があります。
せん断応力は面に対して平行に掛かる力で、xy、yz、zx,の3成分から構成されます。地震で地層が左右に変動するイメージを持つと理解やすいと思います。
垂直応力
せん断応力
CAEソフトを使うと必ず登場する「ミーゼス応力」や「主応力」についてgoogleで調べたことのある方も多いと思いますが、これらの応力を調べると必ず「テンソル」という言葉が出てきます。ミーゼス応力や主応力が理解しやすくなるため、応力を説明する前にまずはテンソルについて解説します。
0階のテンソルには、大きさのみを持つ量、例えば「温度(35℃)」や「長さ(15mm)」などが存在しています。座標は関係ないので、例えば温度計の方向を変えても、計測地点が同じであれば温度は変わりません。0階のテンソルは大きさだけを表しており「スカラー」と呼ばれます。
1階のテンソルでは、大きさに加えて方向が加わるため、ベクトルで表すことができるようになります。例えば、「南東の風2m/s」が身近な例としてあげられます。「力」や「速度」が2階のテンソルの代表例です。
2階のテンソルを使えば、縦横方向の変化がある場合の現象を表すことができます。例えば、ガムを噛んだ時に噛んだ部分は潰れますが、横に広がります。縦方向と横方向の変化に相関がある場合に2階のテンソルが使われます。CAEで用いる「応力」や「ひずみ」は2階のテンソルです。
次元をイメージするとテンソルについて理解しやすくなります。0次元は点だけ、1次元は直線、2次元は平面になります。テンソルの次数は、組み合わせるベクトルの次数に一致します。
テンソルと例
ミーゼス応力は、フォン・ミーゼスによって提唱された応力で、材料が降伏するかどうかの判定に使われます。
ミーゼス応力の計算式を下記に示しています。計算式を見ると垂直応力とせん断応力を2乗して、その平方根を取る操作をしていることに気が付きます。2乗してその平方根を取っているので、ミーゼス応力は全て正の値となります。そのため、引張り(プラス)や圧縮(マイナス)といった方向を、ミーゼス応力で表すことはできません。ミーゼス応力はベクトルではなく、スカラー量です。
xyz方向の垂直応力
xyz方向のせん断応力
ミーゼス応力はスカラー量なので、片持ち梁に掛かる応力を可視化すると下図のようになります。材質がSS400であれば、許容応力は100N/mm2なので、ミーゼス応力が100N/mmsを超えなければ、材料の安全性に問題ないと考えることができます。
ミーゼス応力
主応力は、せん断応力成分がゼロになるように座標系を設定します。ミーゼス応力と異なり、主応力には方向があるため、ベクトルで表すことができます。力の向きが判明するため、材料に掛かる力が「引張り」なのか「圧縮」なのかを区別して表示することができます。
下図は、片持ち梁の右末端に1000Nの力を加えています。片持ち梁の上側には引張応力が働くため、主応力(引張方向)を表示すると、上側に応力が掛かっていることを示す解析結果が表示されます。
ミーゼス応力の場合は、梁の上下に応力の高い部分が存在します。主応力の応力図とは異なるので見比べてみましょう。
主応力(引張方向)
ミーゼス応力と主応力という2つの応力には大きな違いがあります。ミーゼス応力はスカラー量であるため、応力の方向は示しません。一方、主応力はベクトルなので、どの方向に応力が掛かっているのか調べることができます。
材料の許容応力を超えないように部材の形状を設計しますが、この時に役立つのがミーゼス応力です。例えば、SS400では許容応力が100N/mm2であるため、部材の最大応力が許容応力を超えないように形状や肉厚を決定します。
最大の応力が材料の許容応力を超えていないかどうかを確認するために、ミーゼス応力が使われます。もし、ミーゼス応力が許容応力を超えていた場合は、形状を変更して再度解析し、問題がないことを確認して設計は完了です。
「最大主応力理論」は、最大主応力で材料が破壊されるとする理論です。主応力を求める計算式では、せん断応力がゼロになるように座標を設定していました。従って、破壊にせん断力が影響しない脆性材料(伸びない材料)では、材料が破壊されるかどうかの判定に主応力が用いられることがあります。
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