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原油タンクの流体解析


          

今回の解析では、流体解析を使って台風による48m/sという強風を想定して、原油タンクにかかる風圧とタンク周辺の空気の流れを可視化します。耐風圧正に関するJISA4706とJISA4702では、鹿児島県の一部と沖縄県の基準風速が46m/sと全国で最も高く設定されているので、風速を46m/sに設定して解析を行います。

原油タンクの大きさは、直径82m、高さ24.5mです。容量は11万3100klという巨大なタンクを解析して、どのようにタンク周辺の風が流れるのかシミュレーションします。

3DCADで原油タンクの3Dモデルを作成後、解析ソフトにデータを取り込み、流体解析を行いました。原油タンクは大きいものの、形状が複雑でないため3Dモデルの作成からメッシュ作成まで要した時間は30分程度です。


原油タンクの外観

原油タンクの3Dモデル
          

解析ソフトに取り込みメッシュ作成


流体解析では、タンク周辺の空気の流れも解析対象になるため、タンクを囲うように空間を設定します。六面体のメッシュを自動作成すると、下図のようになります。

このメッシュで囲まれた空間内の流体の動きを解析します。要素の数は約45万で、メッシュ作成時間は8コア使用して7分程度でした。

メッシュを作成する空間を指定

メッシュを作成する空間を指定

メッシュ作成

メッシュ作成

上の画像では小さく見えますが、空間は長さ250m、幅150mに設定しています。また、タンクの周囲は258mあるので、周りを歩くと一周するのに4分ほどかかります。

     

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境界条件を設定


流体解析では、空気の入口になる面と出口になる面を設定します。左側から風速46m/sで空気が入り、残りの4面(3面+上面)から空気が出るように境界条件を設定しました。

また、原油タンクは地面に固定されていて、動かないように設定しています。


空気の入口

空気の入り口

空気の出口

空気の出口

空気の物性値を入力


今回の流体解析では空気の流れを解析するので、空気の物性値を入力します。

動粘性係数は温度によって異なりますが、解析では台風による強風を想定しているため、よく使われる20℃での15.02☓10-6m2/sではなく、26.5℃の値である15.79☓10-6m2/sを使います。密度や動粘性係数の値は、熱物性ハンドブック(日本熱物性学会)を参考にしています。


材料 動粘性係数(m2/s) 密度(kg/m3
空気 15.79☓10-6 1.206

流体解析結果を確認する


流体解析の結果を表示しています。流れの速い場所は赤色、流れの遅い箇所を青色で表示しています。境界入口からの風速を46m/sに設定して解析を行いましたが、タンクにぶつかって巻き上げられた風は62m/sもの風速になっています。

空気の流れを可視化できるので、原油タンクのような風洞実験が困難な対象物でも設計段階から風圧のシミュレーションが可能です。


空気の流れを可視化する

空気の流れを可視化する

上側の風速を確認

上側の風速を確認

下図は原油タンクを上から見下ろしています。左側から風が入り、タンクの上部と風下側で風が渦を巻いている様子がわかります。また、タンクの側面を回り込むように風が流れていることも確認できます。


流速によって色分け

流速によって色分け

風洞実験を行って風の流れを可視化することもできますが、原油タンクのような大きな構造物はモックアップを作成しての実験は困難です。そこで、流体解析を活用して流れを見える化することで、設計時点から空気の流れの影響を検討することが可能になります。


地上15mの風速

地上15mの風速

断面図で風速を確認

断面図で風速を確認

断面図で風速を確認することもできます。上の左図は高さ15mでの風速を色分けしています。タンクの側面側が赤色になっていることから、タンクを回り込む風の流れが速くなっていることがわかります。

また、高さ方向の断面図では、タンクにぶつかって巻き上げられた風により、タンク上部に流れの速い箇所が存在することがわかります。


原油タンクにかかる風圧


風速48m/sでは、原油タンクにおよそ1800Pa(N/m2)の正圧がかかる解析結果になりました。原油タンクは曲面で、高さが24.5mと高層ビルに比べると低いので、平面から構成される建築物に比べると、受ける風圧はそれほど大きな値ではありません。

また、ビルの隅角部のように負圧になる箇所は存在しませんでした。負圧箇所がない理由は、原油タンクは曲面から構成されるため、空気の渦があまり発生せず引っ張られるような面が存在しないためと考えられます。


原油タンクにかかる風圧

原油タンクにかかる風圧

3Dモデルがあれば、流体解析を使って短時間に風圧や風速をシミュレーションすることができます。最近の流体解析は精度が向上しているので、10年前では難しかった大型の構造物でも短時間、高精度で解析できるようになりました。

並列コンピューティングは今回紹介したような大型構造物の解析を得意とします。上記の原油タンクの流体解析ではコア数を8コアに指定して解析していますが、解析に要した時間は10分もかかりませんでした。

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